成年後見
高齢者社会を迎えて
現代の高齢社会において、高齢者は、認知症をはじめ、加齢に伴なう心身の老化や病気に罹患するなど、社会生活をしていく上で、高齢者特有の問題に直面しています。
高齢者にとっては避けて通ることの出来ない医療の問題、介護における介護サービス契約の締結や介護サービスの適否、家族・親子関係の崩壊に伴って発生する高齢者虐待の問題等であり、これらは高齢者が自らの力で解決することが極めて困難な問題です。
この困難な問題に備えるための制度が「成年後見制度」と「任意後見契約」です。
成年後見制度について
- 成年後見制度の着実な利用増加
- 成年後見制度は、制定されて12年を経過しました。
平成23年度には利用件数は3万件を超え、後見登記の統計から認められる平成23年3月までの総件数は、約23万4000件に達するなど、成年後見制度の利用が着実に広がっています。 - 高齢者本人のための成年後見制度
-
このように成年後見制度は着実に利用され続けています。
この背景には、成年後見制度においては、高齢者本人の残存能力を活用して高齢者本人をサポートするという「本人のためのシステム」として、高齢者本人の自己決定を尊重するところにあります。例えば、
- 財産管理の面について、成年後見人によって、相続財産を維持するための財産管理ではなく、本人の望む消費を抑制しない財産管理に十分配慮することができます。
- 身上監護の面についても、成年後見人によって、医療の問題や介護における介護サービス契約の締結や介護サービスの適否について、適切な判断が行えます。
- 家族・親子関係の崩壊に伴って発生する高齢者虐待の問題についても、成年後見人によって早期発見・防止することができます。
- 成年後見審判申立について
- 成年後見制度の利用方法については、本人、配偶者、4親等以内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人から、家庭裁判所に成年後見審判の申立を行います。
なお、代理人による申立も認められており、家庭裁判所の代理権がある弁護士に依頼することもできます。
任意後見制度について
- 高齢者本人の意思ができるだけ尊重できる制度
- 任意後見制度は、高齢者本人が、将来に、能力が低下した場合に備えて、本人の能力が低下する前に自ら選択した者に権限を付与しておく制度です。
この制度は、家庭裁判所が成年後見人を選任する成年後見制度と異なり、高齢者本人が成年後見人を事前に選択できるなど、高齢者本人の意思ができる限り反映される制度です。
任意後見契約締結の登記は、この10年で4万729件であり、任意後見制度の利用は、近年、増加傾向にあります。 - 手続について
- 任意後見契約は公正証書で作成することが義務付けられているので、公証人役場において契約を作成します。 そして、公証人の嘱託により任意後見契約登記が法務局にて行われます。
- 注意したい事項について
-
任意後見制度については、高齢者本人の意思を反映しやすい反面、適正な契約内容を確保することが難しいところがあります。
例えば、
- 近時、非常に高額な報酬の取決めや、契約内容が委任者である高齢者に一方的に不利な内容である等、問題のある任意後見契約の事例が見られます。
- 任意後見契約とともに締結される任意代理契約において、高齢者本人の判断能力が低下した後も、合理的な理由もなく任意後見監督人の選任申立てがされず、任意後見受任者が当該任意代理契約による財産管理・身上監護を継続させている事案が問題となっている。
このように任意後見契約の契約内容が適切かどうかの確認が必要です。
弁護士の関わり方
このように高齢者の問題を解決する方法はございます。
ただその前に、ぜひ一度弁護士にご相談下さい。弁護士は、あなたからお話をよく聞き、あなたに一番合った解決方法で高齢者の問題を解決することができます。
例えば、成年後見制度においては、申立段階において、適切な助言ができますし、成年後見人に弁護士が選任されれば、できるだけ高齢者本人の意思に沿った財産管理のほか、身上監護においても適切な判断を行います。
また、任意後見制度においても、弁護士がかかわることで高齢者に一方的に不利な任意後見契約を防止できますし、任意後見契約において、弁護士を任意後見人として選任することで、できるだけ高齢者本人の意思に沿った財産管理のほか、身上監護においても適切な判断を行います。